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秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまは6月1日、民間機で羽田空港に到着し、ギリシャから帰国された。日本との外交関係樹立125周年に際した公式訪問で、記念式典やサケラロプル大統領への表敬訪問などに臨まれた。
佳子さまが5月30日、ギリシャ・ケルキラ島で視察されたアジア美術館は、日本や中国、インドなどの美術品を含む約1万5千点を所蔵。過去には、江戸時代の浮世絵師、東洲斎写楽の〝幻の肉筆画〟も発見されるなど、日本とゆかりの深い場所だ。
1928年に開館
美術館はギリシャの外交官、グレゴリオス・マノスがフランスやオーストリアなどで購入、寄贈したコレクションを中心に、1928年に開館。日本の美術品は全体の約4割に当たる6200点超を占め、縄文時代の石器から、江戸時代の能面や化粧品まで多岐にわたる。中でも、17~19世紀の浮世絵などの日本画を豊富に取りそろえる。
特に貴重とされるのが、東洲斎写楽の肉筆画だ。寛政6(1794)年5月から、わずか約10カ月の短期間に浮世絵などを制作したとされる写楽。美術館にある縦17・4センチ、横46・6センチの扇形の浮世絵は、歌舞伎の演目「仮名手本忠臣蔵」の一場面が描かれており、制作は寛政7年ごろ。すでに「引退」していた写楽が、歌舞伎ファンの依頼で特別に制作したものとみられる。
日本の調査で判明
日本の研究者らが平成20(2008)年に調査し、筆跡や花押などから写楽の肉筆画と認定。調査団の一員で、慶應大の内藤正人教授は「19世紀後半に巻き起こったジャポニズム(日本美術への愛好)は、フランスを中心にドイツなど色々な国に伝播した。外国の地方の美術館には今も、研究者も知らないコレクションが所蔵されている」と話す。
30日、美術館で写楽の浮世絵を前にした佳子さまは、説明役の担当者に保管方法などについて尋ね、「すごく大切に保存してくださっているものを見ることができて、とてもうれしく思います」と感想を伝えられた。
内藤教授は「明治維新以降、多くの浮世絵が海外へ渡ったが、ジャポニズムがなければ捨てられていたかもしれない。ギリシャの人が浮世絵に関心を持ち、愛でてくれていたということを、日本人にも知ってもらえたら」と話す。
筆者:吉沢智美(産経新聞)